皆様、こんにちは。中村恵美司法書士行政書士事務所の中村恵美です。
前回は、「あなたはAさんの相続人です。Aさん所有の不動産について相続登記が必要ですので、ご協力ください」というお手紙が司法書士から届いたとき、まず何を確認すればよいかについてお話ししました。
私は司法書士として、まさにこうしたお手紙をお送りする側の立場にあります。実際には、戸惑いながらもご連絡をくださる方がほとんどです。一方で、まったくご連絡をいただけないまま、時間だけが過ぎてしまうこともあります。
ご連絡をいただいたほうが、結果としてその方ご自身の不利益を防げることが多いように感じています。今回は、「もしそのままにしておいたら、どうなるのか」について、実務で見てきたことを交えながらお話しさせていただきますね。
■ 遺産分割調停に進むことがあります
任意にご協力いただけない場合、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立ることがあります。
調停の期日は平日に指定されますので、裁判所へ出向いていただくのが基本です。事情によってはウェブ会議や電話会議での参加が認められることもありますが、いずれにしても、時間的・精神的なご負担は決して小さくありません。
そして調停の場で初めて、「その不動産はいりません」とおっしゃる方が、少なくないのです。
最初のお手紙が届いた段階でそのお気持ちをお伝えいただいていれば、調停という手段を取らずに済んだのに……と感じることが、正直なところ何度もあります。
■ 手続きそのものが断念されることもあります
ご依頼者の中には、調停まで進むことを望まれない方も多くいらっしゃいます。追加の費用も手間もかかるからです。
その結果、相続登記がされないまま、不動産が放置されてしまうケースもあります。
今は特定の相続人の方が管理してくださっているので、他の相続人は何もしなくて済んでいる、という状態かもしれません。けれども、その方がいなくなったとき、次に困るのは残された相続人です。
■ 固定資産税の負担は、相続人全員に及びます
相続登記が済んでいなくても、相続人の方は、その不動産の固定資産税の納税義務を負います。
遺産分割が終わっていない不動産は相続人の共有状態にありますので、地方税法第10条の2第1項により、共有者は連帯して納付する義務を負うことになります。つまり市町村は、相続人のうちどなたに対しても、税額の全部を請求することができるという建てつけです。「自分の持分の分だけ払えばよい」とは限らない、ということですね。
実際には、代表者として指定された方のところへ納付書が届きますので、他の相続人は気づかないまま過ごしていることも多いと思います。ただ、その方がいなくなった後、ご自身のもとに自治体から突然通知が届く可能性はあります。
また、実際に負担してこられた相続人の方から、持分に応じた分を支払ってほしいと求められることもあります。共有者の間では、持分の割合に応じて負担するのが原則とされているためです。
■ ご自身にも申請義務が生じている場合があります
前回お話ししたとおり、令和6年(2024年)4月1日から相続登記の申請が義務化されています。
不動産を相続で取得した相続人は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつその不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に申請することとされ、正当な理由なく怠った場合には10万円以下の過料の対象となることがあります。
お手紙で初めてご自身が相続人だと知った場合、その時点が起算点と考えられます。つまり、放置しておくことがご自身の不利益につながる可能性もあるのです。
遺産分割がすぐにまとまらないときは、「相続人申告登記」という簡易な方法で申請義務を果たすこともできます。また、相続放棄が認められれば初めから相続人でなかったものとして扱われますので、この義務も生じません。いずれにしても、何もしないでいることが一番不利益につながりやすい選択肢だと思います。
■ 「将来の負担を避けるチャンス」でもあります
「この不動産を相続してもよい」とおっしゃる方がいらっしゃるうちに、その方の名義にまとめてしまえば、面倒な問題がご自身やお子さん、お孫さんの代にまで引き継がれることはなくなります。
そう考えると、突然届いたお手紙は、面倒であると同時に、将来の負担を整理できる機会でもあるのかもしれません。
■ まとめ
今回は、心当たりのない相続登記への協力依頼をそのままにした場合に起こりうることについて、お話しさせていただきました。
- ご協力いただけない場合、遺産分割調停に進むことがあります
- 手続きが断念され、不動産が放置されたままになることもあります
- 相続人は固定資産税について連帯して納付する義務を負い、全額を請求される可能性があります
- 放置した場合、ご自身が相続登記の申請義務を果たしていない状態になることもあります
- 協力するか、相続放棄をするか、まずは意思をお伝えいただくことが、ご自身のためにもなります
面倒に感じられるお手紙かもしれませんが、少し勇気を出してご連絡をいただくことが、結果的にご自身を守ることにつながります。
必要な手続きや進め方は、お一人おひとりのご事情によって変わってきます。「自分の場合はどうすればよいのか分からない」「まずは届いた手紙を見てもらいたい」という段階でのご相談も歓迎しております。
当事務所は、ご来所のほか、WEBでもご相談いただけます。まずは、お問い合わせフォーム、メール、公式LINEからお問い合わせください。岡山で相続や遺言、終活のことを考えていらっしゃる方は、どうぞお気軽にお声かけくださいね。
中村恵美司法書士行政書士事務所
代表: 中村 恵美
〒700-0816 岡山県岡山市北区富田町2丁目2-11
TEL:086-237-0287
(受付時間:平日 9:00〜18:00)
▼Webからのご相談・お問い合わせはこちら
